竹中労 著
昭和という時代にはいつも美空ひばりの曲が流れていた。その旋律を奏でていた天才歌姫を等身大で描きながら、昭和という時代はどうだったのかを問いかける渾身のドキュメンタリー。
「なぜか人は昭和に別れを告げるように、去ってゆく。美空ひばりが重態であると彼女に親しい筋から知らされたとき私は、おのれの胸の底に暗い穴をあけて吹きぬける、風の音を聞いた。
五十二歳の早逝を傷みますまい、あなたは正真正銘の菩薩となって、夢の世でもうたいつづけているにちがいありません。間もなくそこへゆく私たちはただ、美しく哀しい歌を有難うと、おのが心に囁くのみです。」(本文より)
版型: |
【紙版】四六並製 【POD(紙版)】B5判 |
ページ数: | 336ページ |
本体価格: |
【紙版】1,500円 【POD(紙版)】2,020円 |
発売日: | 2019.12.19 |
まえがき ……6
第一部 笑顔と涙の遠い道 ……11
第一章 私は街の子 生いたち(一九三七〜四七) ……12
屋根なし市場のころ ……12
瓦礫の街より ……24
のど自慢狂時代 ……40
第二章 リンゴの花びらが スターヘの道(一九四八〜五二) ……50
横浜国際でのデビュー ……50
スター誕生 ……60
越後獅子の唄 ……79
第三章 わかれ道 ひばり自身の追憶から(一九五二〜六五) ……97
涙に虹のかけ橋を ……97
『たけくらべ』 ……108
影を慕いて ……126
第四章 さよならの向うに ひばりはどこへゆく ……139
女の花道 ……139
芸と妻の間で(手記) ……147
理解離婚 ……154
サッチモとひばり ……164
そして、ひばり羽ばたく ……175
第二部 地球の上に朝がくる 歌ごよみ三〇年 ……185
第一章 戦争のなかをゆく歌謡曲 ひばりを生んだ社会的背景 ……186
暗い夜道をただ一人 ……186
もしも月給が上がったら ……190
時よ時節よ変わろとままよ ……197
地球の上に朝がくる ……206
とんぼ返りで今年も暮れて ……212
第二章 歌でみる二〇年 ひばりをめぐる戦後社会史 ……225
ああ一億の民が泣く ……225
歌謡曲亡国論 ……232
芋よりほかに食うものなし ……243
冗談音楽の登場 ……249
日本民衆的なるものヘ ……257
第三部 かくて、それからの美空ひばり ……267
第一章 五・三〇、ひばりとの出会い ……268
第二章 わが青春の美空ひばり 戦後映画史の流れにつづる ……276
歌は、映画と共にあった ……276
ひばりは、わが魂を衝った ……279
ひばり、ムイ・ボニータ ……284
第三章 ゴッド・マザーの死 ……287
青銅の牛のように ……287
なぜ、親分のことを書いたのよ! ……291
お嬢は神様である ……295
庶民の情理、その裏にあるもの ……299
「ひばりの愚弟」考 ……304
田岡一雄、かく語りき…… ……309
遠くチラチラ灯りが見える ……314
第四章 ひばり昇天 ……319
I ひばり、翔びなさい! ……319
Ⅱ かくて、昭和は終わりぬ ……321
Ⅲ さらば! ほろびゆく夏の光よ ……323
Ⅳ 国民栄誉賞を嗤う ……325
あとがきにかえて 美空ひばりに捧げるオマージュ ……329
竹中労(たけなか・ろう)
1930年生まれ。東京外語大学除籍。フリーのルポライターとして活躍。政治から芸能まで広い分野をテーマに、権威とは無縁な時代の心性を掘り起こす文章は、竹中節として多くの読者を魅了した。91年5月19日肝臓癌で死去。父親は画家の竹中英太郎。主な著書に『黒旗水滸伝』『山谷・都市反乱の原点』『琉球共和国』『世界赤軍』『ビートルズ・レポート』『にっぽん情哥行』などがある。